同性愛を巡るアメリカの教会ノケース・スタディ:4つの立場

アメリカの教会では同性愛について日本よりもかなり前から議論や試みが積み重ねられています。日本における文脈とは異なる部分が多々ありつつも、学べることは多いでしょう。このテーマに関してアメリカの教会では4つの異なる立場が鮮明になりつつあります。そこには単純な「賛成か反対か」ではない細かいニュアンスの違いがあることが見て取れます。[1]


[1] https://www.lifeonsideb.com/thefoursides 4つの立場について詳しくまとめられています。

Side-A 「容認(affirming)」派

完全にAffirming、つまり「容認」する立場。同性婚を認め、司式をし、ゲイ・レズビアンの教職を認める。主流派の教会(PCUSA、Episcopalなど)がこの立場です。福音派の中でSide-Aの立場はほとんど存在していません。(一部例外としてロブ・ベルなど)福音がすべての人に開かれていること、教会は神の愛を体現する場として真に包括的(inclusive)であるべきだと強調します。

参考資料:James BrownsonのBible, Gender, Sexuality。福音派の立場から同性婚を認める聖書解釈を展開します。Matthew VinesのGod and Gay Christianは最も影響力のあった本の一つです。

Side-X 「転向」派

最も保守的・伝統的な立場です。性的指向を含めて罪科を伴う罪と捉え、カウンセリング等を通して指向性の転向を勧めます。ネットフリックスのドキュメンタリーで極端な(隔離・電気ショックなどを用いた)転向療法が問題視されましたが、現在ではそのような手法ではなくカウンセリングが中心となっています。転向療法で有名になったエクソドス・インターナショナルなどが該当します。またペンテコステ・カリスマ系の一部教会でも祈りによって指向性を「癒す」働きも存在しています。

参考資料:Joseph NicolosiのReparative Therapy of Male Homosexualityは転向療法のカウンセリングマニュアルです。Robert GagnonのThe Bible and Homosexual Practicesは緻密な釈義に則っており、どの立場でも無視できない本となっています。

Side-B 「独身ゲイクリスチャン派」Celibate Gay Christian

Side-Aとは異なる立場として2010年以降主に福音派の教会の中で始まった運動です。当事者のウェスレー・ヒルを中心に、自らを「ゲイ・クリスチャン」と自称し、ゲイアイデンティティを保ちつつも伝統的な結婚観に立ち独身を貫く立場です。保守的でありつつも転向療法やナッシュビル宣言に対して強い批判を繰り広げ、性的マイノリティの権利を守る活動をしていることでも有名です。同性のパートナーシップの代替として「スピリテュアル・フレンドシップ」を提唱し、当事者が教会において孤独にならない仕組みづくりに力を入れています。福音派の中では最も賛否両論を読んでいる立場とも言えます。

参考資料:ウェスレー・ヒルのWashed and Waiting, Bridget Riveraの7 ways LGBT Christians experience harm in the churchなど。Revoiceカンファレンスを開催し、積極的に情報発信をしています。[1]またLife on Side-Bポッドキャストも有名です。[2] 


[1] https://revoice.us 有料で過去大会の動画を視聴可能

[2] https://www.lifeonsideb.com

Side-Y Same Sex Attracted Christian 「同性愛指向を持つクリスチャン派」

自ら「ゲイ」を自称するSide-Bに対して、世間一般で使われているゲイアイデンティティとの混同を防ぐためSSA(Same Sex Attraction) を用います。当事者であるサム・アルベリー、ヴォーガン・ロバーツ、クリストファー・ユアンなどが有名です。特にアルベリーのIs God Anti-Gay?はベスト・セラーとなりました。ナッシュビル宣言に賛同し、指向性が変わることを否定はしないものの、それだけが聖化の道ではないとします。アメリカの福音派の中では現在最も中道的な立場です。

参考資料:Sam AllberryのIs God anti-Gay? Christopher YuanのHoly Sexuality and the Gospelなど。またイギリスの福音派内で始まったLiving Outミニストリーも該当します。[1]


[1] https://www.livingout.org

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