前回の記事では、ネット上で調べられる以下の2つのポイントを元に 神学校比較 について考えました:
・カリキュラムのバランス
・特色(他の神学校には無い科目)
今回は逆にネット上で情報収集が難しい3つのポイントについて考えてみたいと思います。
1.授業内容(授業の質、教授陣)
2.卒業生の声(どんな卒業生を輩出しているか
3.環境(クラスメイト、校舎、住環境など)
以上の3つのポイントは、ネットで調べて単純比較するのが難しいポイントです。同時に実際に神学校で学ぶ上で重要な意味を持つポイントでもあります。
1.授業内容(授業の質、教授陣)
授業内容や質に関しては、神学校を選ぶ上で多くの人にとって恐らく一番重要な項目ではないでしょうか。個人的にも前回の記事に対して
という要望をいただきました。。。
ですが、授業の内容を客観的に比較するのはほぼ不可能です。それはそもそも授業の「質」という時に何を基準としているか人によって異なるからです。授業内容の高度さ、分かりやすさ、実践的な内容かどうか、など授業の「質」を測るための基準は人それぞれです。例えば非常に学問的にレベルの高い授業と、学問的なレベルよりも実際の牧会の現場での実用性を重視した授業とどちらが「質」が高いと言えるでしょうか?
その答えは神学校で学ぶことの目的をどのように考えるかによって変わります。どっちの「質」が高くてもう片方の「質」が低いと言うことはありません。それぞれ異なる「役割」と「目的」を持っているので、単純比較はできません。ギターとドラムどっちが優れた楽器かを論じるようなものです。
神学校の教授陣の「質」に関しても同様です。ネット上で調べれば教えている先生の経歴や学歴を調べることは簡単です。学歴だけで比較するのであれば客観的比較は出来るかもしれません。しかし授業の「質」と同じく、肩書きだけの比較は神学校の場合あまり大きな意味を持ちません。
通常の大学であれば、
授業内容のレベルx教授の肩書きx教授の教え方の上手さ=授業の「質」
という公式が多くの場合は当てはまります。しかしこと神学校に関してはこの公式は当てはまりません。なぜなら神学校で学ぶのはただ学問的追求のためではなく、牧会者、宣教師、または超教派スタッフとして働くための「備え」だからです。
働き人の数だけ奉仕の理念やスタイルがあります。厳密な聖書釈義に基づき、現代の課題を聖書から解き明かすアカデミックなスキルが求められる働きもあれば、学生と同じ目線になって遊び、神様の愛を生き方を通して伝える働きもあります。どちらの働きが優っている、劣っているというこはありません。。
なので、どこの神学校で学ぶかを考える時に大事なのは
自分が将来どのような働きをしたいのか。そのためにどんな学びが必要か。
というポイントだと思います。そのことを明確にした上で、ではその神学校の授業内容は将来の働きのための備えになるかどうかという尺度で判断することができるようになってきます。授業の質の「優劣」というよりは、将来自分が召されている、または祈っている働きにどのような影響があるかという観点です。
とは言え、神学校で学んだことがなければ実際現場でどういう学びが必要なのかということはイメージしづらいと思います。その点において、参考になるのが次のポイント「卒業生の声」です。
2.卒業生の声(どんな卒業生を輩出しているか)
ジャパネット高田ではよく商品の紹介で「Before and After」の映像が登場します。商品を使用する前と後でどのような変化があるのか。それが商品の信憑性に大きく関わってきます。(疑わしいものも多いですが。。)
もちろん神学校は商品ではありませんし、この例えは少し不適切かもしれません。それでも神学校に行く前(before)と卒業後(after)には必ず変化があります。逆に神学校に行っても何も変化が無いのであれば行かない方が良いでしょう。(笑) 問題はその変化がどのようなものかということです。それを考える一つのポイントは「卒業生」です。
神学校はそれぞれミッションステートメントを持っています。(呼び方は学校によって異なります)その学校での学びを通して、どのような働き人を育てたいかというビジョンです。そして卒業生はその神学校教育の実として、その学校のミッションステートメントを体現する存在でもあります。
実際の働きの現場でどのような学びが役立ったか、または他にどんなことを学んでおきたかったかなど、実際の現場で活躍する卒業生の生の声から学べることはとても多いです。是非周りの牧師先生、宣教師、超教派スタッフに根掘り葉掘り聞いてみましょう。
また、逆転の発想で卒業生から神学校を選ぶという考え方もあると思います。もちろん、同じ神学校を出たからといって全員が同じ働きをするわけではありません。個性や賜物も違うので同じ神学校出身者でも全然違った働きをしている人は大勢います。しかしそれでも不思議と同じ神学校を卒業している人には独特の雰囲気がある場合が多いです。「あの先生達雰囲気似てるな〜」と思ったら同じ神学校出身だった、というようなことはよく起こります。同じ釜の飯を食い、同じ講師陣から学んでいるのである意味当然なのかもしれません。
試しに、自分がお世話になった先生、尊敬している先生、本の著者、etc。どういう神学校を出ているのか調べてみましょう。例えば出身神学校で本を分類してみたりするとある傾向が見えてきたりするかもしれません。
(補足:「あの先生みたいになりたい!」と憧れを持つこと自体は必ずしも悪いことではないと思います。もちろんそれぞれ与えられてる賜物は異なります。憧れがいきすぎてしまうと、憧れの対象が偶像化してしまうことも十分あり得ますから注意は必要です。それでも尊敬の感情自体は悪いものではありませんし、「あの先生が学んだ神学校で学びたい」という気持ちがあっても良いと思います。)
3・環境(クラスメイト、校舎、住環境など)
最後のポイントとしては学びの「環境」です。これ、実は超大切です。ただ知識を学ぶだけであればある意味本を読めば足りるわけです。神学校で学べることを全て自力で自習することも可能でしょう。(相当な覚悟と意志の持ち主なら・・)しかし神学校はただ「知識を学ぶ」場所ではありません。
トリニティ神学校の入学式でのグラハム・コール学長の挨拶は衝撃的でした。
授業によって知識や実践的なノウハウを教えるのが教授だとしたら、クラスメイトは働き人としての人格形成や霊性(spirituality)の形成に影響を与えるというのです。半分というのはもしかしたら言い過ぎかもしれませんが、確かに学ぶ環境、特にクラスメイトが与える影響は絶大です。共に学ぶ神学生は一生の戦友です。切磋琢磨し、お互いに励ましあっていく中で、良くも悪くも多大な影響を受けます。人は友よって砥がれるのです。
その点で、その神学校の学生がどういう背景で、どういう志で学んでいるかを知ることは大切です。神学校それぞれある種の異なる「空気感」を持っています。例えば、私は日本で三つの神学校を見学しましたが、そこで学んでいる人の雰囲気は全く異なっていました。こんなに神学校によって違うのか!と驚いたほどです。
「ここで学びたい!」また「彼らと一緒に学びたい!」と思える神学校の環境や空気感。これは学びのモチベーションに関わる、侮れない大事な要素です。そしてこれこそネット上では調べられない情報でもあります。
今の時代、学生の声を掲載している神学校もありますし、クリスチャン系メディアで在校生インタビューなどが行われることもあります。(例えばFEBCの「神学生に聴く」企画など)しかしやはり実際に足を運んでみないと分からない部分は多いです。ということで今日の結論は・・・
結論:足を運んでみましょう!
以上、授業内容、卒業生、環境とネット上では調べられない神学校を比較する上でのポイントを見てきました。これらの3つのポイントを調べる方法、それはズバリ実際に足を運んでみることです。
神学校に足を運ぶには主に3つの方法があります。
1.オープンキャンパスに行く
2.予約を取って授業見学をする
3.授業を聴講する
1.オープンキャンパスに行く
どの神学校も年に1・2回オープンキャンパスを実施しています。気になる神学校のオープンキャンパスの日程をネットで調べてみましょう。(学校によってはオープン・デイなどと若干呼び方が異なる場合もあります)まずはオープンキャンパスに足を運んでみるところから始めてみるのが良いと思います。
2.予約を取って授業見学をする
また、オープンキャンパスはある意味就職活動でいう企業説明会、またはワンデーインターンシップのようなもの。通常以上に神学生も教授陣も気合いが入っています。授業内容も、その日限りの特別講義があったり、普段の授業でも初めての人に分かりやすいように補足がなされたりする場合が多いです。
もっと普段の姿を知りたい!という方は是非勇気を出してオープンキャンパスではない日に「学校見学」してみましょう。多くの神学校では学校見学を受け付けてくれます。気になる科目や先生の授業を直接自分の目で確かめてみましょう。オープンキャンパスの日とは違う神学校の「日常」の姿が見えてくると思います。
3.授業を聴講する
そして最後に最も良いのは「聴講」することです。1日だけの見学ではなく、一つの授業を最初から最後までクラスメイトとともに学ぶということです。当然聴講はお金も時間もかかります。神学校によりますが聴講するためにも証の提出や牧師の推薦が必要なところも多いです。ある意味一番ハードルは高いかもしれません。
ですが、聴講以上に授業の内容と学校環境の本当の姿が良い面も悪い面も含めて見えるものは無いと思います。当然クラスメイトとともに過ごす時間も増えます。どのような経緯で神学校に導かれたのか、卒業後のビジョン、宣教への想い等、共に学ぶ中でしか分からないことはたくさんあります。
長くなってしまいましたが、ネット上で調べられない神学校の情報を集めるためには「足を運んでみよう」というかなりアナログな結論になりました。ネットで調べられる情報と調べられない情報があります。現代はグーグルに聞けば何でも教えてくれる時代ですから、多くの若者はネットの情報=情報源の90%以上を占めていると言っても過言では無いと思います。
ネットで得られる情報は最大限に活用しつつも、ネットの情報だけに頼るのではなく、自らの足で色々と情報収集してみましょう!
海外の神学校のように足を運べない場合は場合はどうするの?
という場合のために、次回は実際に足を運べない海外の神学校でも今日の3つのポイントを調べる方法について書こうと思います。(どんどんニッチな方向に。。)
献身を祈ってる人、神学校を考えてる人にとって少しでも助けになれば幸いです。