何が違うの? 神学校 の選び方(1)

前回の記事「アメリカの神学校に行く理由(1)日本の方がレベルが低い?」ではアメリカの 神学校 と日本の 神学校 を「聖書神学」という観点でざっくり比較してみました。こんなマニアックなテーマ興味ある人いるんだろうか。。と思いきや予想以上の反応にびっくり。そして沢山の人から要望や質問を頂きました。その中で気付いたのが、海外の神学校と日本の神学校以前に、

日本の神学校を比較して書いている情報がほとんど無い

神学校に行こうと思っている。もしくは考えている。でもどこに行けば良いのか、何が違うのかが分からないという人が結構多いことに気づきました。そこで今回はアメリカは一旦置いておいて、どうやって神学校を選ぶのか。比較のポイントはどこにあるのか、個人的な見解をシェアしたいと思います。

(注意:個人見解であり、神学校の特徴を把握するためであって神学校同士の優劣をつけるものではありません。)

神学校 を選ぶときに参考にした項目

以下、自分がどの神学校で学ぶか迷っていたときに参考にしていた項目です。

point

1.授業内容(授業の質、教授)

2.環境(クラスメート、校舎、住環境など)

3.卒業生(どんな卒業生を輩出しているか)

4.カリキュラムのバランス

5.特色(他の神学校には無い科目)

6.コスト(学費・寮費など)

今はネットの時代です。神学校にいくことを考え、祈り始めた時点でネットで情報収集をするという人が今の若い世代はほとんどではないかと思います。神学校によってはあまりウェブサイトが充実していない所もありますが。。。(ごめんなさい!でも若い献身者を育てるためには神学校のネット対策は非常に重要だと思います)今回はとくにネットで調べることができる情報をピックアップしてみます。

ネットで調べられる情報

  • 4.カリキュラムのバランス
  • 5.特色(そこでしか学べないこと)
  • 6.コスト(学費・寮費など)

後半の4-6はネットで調べられる情報です。今はネット社会。ネットで調べられることは事前に全部調べておきましょう!3の学費・寮費については比較的調べればすぐ分かりますし、比較もしやすい(すでに数字になっている)ので割愛します。

今回注目したいのは客観的に比較できる以下の項目です

  1. カリキュラムのバランス
  2. 特色(他の神学校には無い科目)

1.神学校 のカリキュラムのバランス

バランス

前回の記事でも書きましたが神学校は主に以下の四つの内容を学びます

神学4分野

1.聖書神学(聖書そのものを聖書原語で学ぶ)

2.組織神学(聖書全体からあるテーマについて学ぶ)

3.歴史神学(教会の歴史、教理の歴史)

4.実践神学(メッセージ、カウンセリング、伝道などの実践)

どこの神学校に行っても牧師育成を目的としている神学校であればこの4分野のどれかが欠けているということはまず無いでしょう。

4分野全て重要かつ相互補完的です。どれか欠けて良いものはありません。

ですが、神学校によって当然牧師として必要な学びは何か。という考え方には差があります。例えば「牧師は聖書を語るんだから聖書の学びが最優先」だと考える神学校があれば、「現場に出たときのために実践的な学びを優先」という考え方の学校もあります。

(大きく分けると実践重視か学び重視かというのは世界の神学校でもどちらかに別れる傾向があるように思います。)

2.神学校 の特色(他の学校には無い科目)

カリキュラム

また、その学校ならではの科目をみることも重要です。限られた3年、もしくは4年の中でその神学校が「あえて」他の神学校では扱わないような科目をカリキュラムの中に組み入れているのであれば、そこは要チェック。その神学校ならではの考え方を反映している場合が多いです。

逆に他の多くの神学校の多くは入っているのに無い科目、というのも調べてみると良いでしょう。

今回は参考程度にいくつかの神学校をピックアップして4分野のバランスをエクセルシートで比べてみました。方法としては必修科目に絞り、単位数の合計に対するそれぞれの単位の割合を表示しています。ざっくりどの神学校がどこに重点を置いているのか分かると思います。どの神学校も単位の計算方法が違うので合計数が多い=授業が多いという訳ではまったくありません。あくまでバランスを見るための表です。(例えばJTJは2年間と一番短いブログラムですが合計単位数がとんでもないことになっている風に見えます。これはおそらくJTJの1時間=物理的な1時間として計算しているからだと思います)

*いくつか分類が難しい科目があったのですが、独断でむりやり4つのうちに分類しています。あくまで目安としてお考えください。

*TCU(東京基督教大学)の皆さんごめんない!!必修が少なく、選択科目が多すぎて比較が難しすぎて割愛しました。TCUとっても良い学校だと思っています。何か良い方法があれば教えてくださいm(_ _)m

福音主義・超教派 神学校 比較

まずは福音主義に立った超教派の神学校の比較です。超教派=特定の教団・教派に所属していなくても入れる神学校です。超教派といっても多くの場合どこかの教団とより関係が深いということは多いです。(例:聖契は聖契教団に属していますし、TCUは同盟と日本長老と関係が強い等)

日本の福音派の教会は同盟、JECA、福音自由など特定の神学に立たない、「自由教会」の流れを組む比較的ゆるい繋がりの教団が多いのが特徴とも言えます。教団自体がある種超教派のような教団です。単立、または同盟、JECA、福音自由などの教団出身の方は超教派の神学校に入る方が多いと思います。

神学校 比較1

 こうやって比べてみると、ざっくりですが神学校ごとの強調点の違いがわかりやすいかと思います。聖契と北海道聖書学院が比較的全体的なバランスを重視しているのに対して、聖書宣教会はカリキュラムの半分以上を聖書神学に特化しています。またJTJは組織神学と歴史神学の割合がかなり低く、聖書と実践に特化しているのが分かります。これは神学校ごとの考え方の違い、また性質の違いも反映していると思います。例えば聖書宣教会や北海道聖書学院は卒業後牧師や宣教師になる卒業生の割合が高いですが、聖契神学校やJTJは牧会以外にも教会スタッフや超教派スタッフとして働くケースが多いなど。(あくまで主観的な傾向ですが)

具体的なカリキュラムの違いは一つ一つみるときりがないので興味がある方のためにそれぞれのシラバスのリンクを貼っておきます。

聖契神学校北海道聖書学院聖書宣教会JTJ

神学校の 特徴的な科目

独自性

それぞれの神学校には、その神学校ならではの科目があり、神学校の性質を表しています。いくつかピックアップしてみましょう

聖契神学校:霊性の神学I・II、比較宗教、敬虔主義、中間時代

「霊性」と聞くと少し胡散臭いような科目名ですね。笑 しかし内容としては静まり祈る様々な方法の紹介や実践です。牧会者として働く上では一人で神様の前に静まり、祈るというのはもっとも大事な時間の一つだと思います。しかし多くの場合、「科目」としてそれを教えている神学校は日本では少ないように思います。(海外では実は多くの神学校がここ10年ほどで取り入れるようになっています。)「中間時代」は旧約と新約の間の時代のことを差しますが、実は新約聖書理解には非常に重要です。

北海道聖書学院:北海道キリスト教史、帰納法聖書研究、個人伝道、教父学、聖書地理

北海道ならではの地域伝道の歴史を学ぶことは北海道で宣教をするのには必要なことでしょう。また「帰納法聖書研究」を科目として扱っているのもとても興味深いです。宣教団体OMFとの関わりも強い北海道聖書学院だけに、講壇からの説教だけでなくもっと小グループや個人で伝道にも注力しているのかもしれません。

聖書宣教会:アラム語、コミュニケーションと放送伝道、賛美歌学

アラム語が必修というのはさすが原語での学びに力を入れている宣教会だけあります。他の神学校でアラム語が必修というのは世界でもあまり聞いたことがありません。また他の神学校と比べて特徴的な授業はそこまで多くは無いものの、以前も紹介したように聖書神学の科目数が圧倒的です。例えば新約・旧約釈義のクラスはI-IVまであります。原語でしっかりと聖書を学べる働き手を育てるという意気込みが感じられます。

JTJ:イスラエル史、刷新論、VIP、CCCなど様々な講師による実践

イスラエル史を科目として教えている神学校は今は珍しいのではないでしょうか。またJTJは他の神学校とは少し特色が異なり、オンラインでも受講可能なことから、かなり幅の広い講師陣がおり、VIPやCCCなど各宣教団体から宣教の現場について学べるのも特徴かもしれません。

福音主義・教派 神学校 比較

カルバン 神学校
John Calvin

では今度は参考程度に超教派ではない、特定の教派・教団に属している教派神学校をいくつか比較してみましょう。

神学校 比較2

今度は福音主義に立った教派別神学校です。代表的なきよめ派、改革派、ルーテル派、ペンテコステ派(アッセンブリー)の神学校からピックアップしています。興味深いことに、教派別の神学校でも神学4分野のバランスが微妙に異なります。関西聖書学院や中央聖書神学校では実践分野が一番多く、逆に神戸ルーテル神学校では聖書神学が一番科目の比重が多いです。また神戸改革派神学校は組織神学の比率が27%とどの神学校よりも多くなっています。さすが、組織神学といえば改革派。(神学を体系化し、組織化して考えるのは改革派神学の一つの特徴でもあります)

また、神学校ごとの独自の科目は当然ながらその教団の色を反映したものが多いです。関西聖書神学校ではバックストン、神戸改革派ではカルバンなど、その教団の神学の歴史的ルーツを学ぶ授業が目立ちます。また神学的にも神戸改革派にはウェストミンスター信仰基準研究が2科目あったり、中央聖書ではペンテコステ神学の授業があったり、その教団ならではの神学の強調点を学ぶことができます。神戸ルーテルに関してはホームページ上には不思議とルター研究などの科目は見当たらず、意外でした。見落としていたのかもしれませんが。。

ちなみに特定の教派に属している、または特定の立場の神学校に行きたいと考えている人は似ている立場の神学校をいくつか比較してみることをおすすめします。神学のルーツは同じでも、カリキュラムの強調点が異なっている場合が多いからです。以下参考程度にいくつかあげておきます。(漏れがあったら教えてください)

  • 改革・長老系:神戸改革派(改革派)、東京基督教大学(TCU)(日本長老)、CBI(Christ Bible Institute)
  • きよめ派系:関西聖書神学校(日本イエス)、東京聖書学院(ホーリネス)、イムマヌエル聖宣神学院(インマヌエル)
  • ペテンテコステ・カリスマ系:中央聖書神学校(アッセンブリー)、KBI(関西聖書学院JEC教団: 関西聖書神学校と似ているので注意)、生駒聖書学院、CFNJ

長くなってしまいました!次回はネットで調べられない神学校情報についてです。実はこっちの方が重要かもしれません。笑

2 件のコメント

  • お疲れ様です。
    インマヌエルの神学校の名前は、イムマヌエル聖宣神学院となっているので、次回の更新の際はよろしくお願いします。

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