アメリカの神学校 で学び始めてからよく友人に聞かれる言葉、それは
「何でわざわざ アメリカの神学校 に行くの?」「日本じゃだめなの?」
「日本の神学校に行こうか海外の神学校に行こうか迷っている」という相談もよく受けます。ある人に理由を聞いたところ「海外の方がちゃんと学べると思う」といったような理由でした。
確かに一昔前には「海外の神学校の方がレベルが高い」、「ちゃんと学ぶなら本場で学んだ方が良い」などと言われていた時代もあったようです。(いつの時代でしょうか)ですが、結論から言うと日本の神学校の方が海外に比べてレベルが低いなどと言うことは・・・
全くもってありません。
むしろ場合によっては日本の神学校のカリキュラムの方がアメリカの神学大学院のプログラムよりもはるかに大変ということはよく耳にします。
具体例を見てみましょう。全てのカリキュラムを比較するのは難しいので、神学校といって多くの人がまず考えるであろう「聖書について学ぶ」という分野、つまり「聖書神学」(Biblical Theology)に絞って比較します。ギリシャ語・ヘブル語の原語の学びを基礎として、聖書本文を当時の言語と文脈で読み解く作業「聖書釈義」が土台となっている科目群です。「聖書を(聖書神学を)学ぶ」という観点で以下アメリカの神学校と日本の神学校を比較してみます。
アメリカの神学校 :聖書神学カリキュラム比較
まず具体的にアメリカの神学校のカリキュラムを見てみましょう。アメリカの神学校は基本的にはMDIV(Master of Divinity・牧会学修士)という学位が日本でいう3年ー4年制の神学校と同等のものとなります。アメリカで牧師になるためには基本的にはMDIVを持っていることが条件とされるところがほとんどです。しかしこのMDIV。中身は神学校によって大きく異なります。具体的に聖書神学の分野に絞って比較してみます。以下順番に1・タルボット(バイオラの大学院)2・トリニティ(私の留学先です)3・フラーといったアメリカの中で知名度の高い福音派かつ超教派の神学校の聖書神学カリキュラムです。そして4つ目と5つ目には福音派ではないいわゆるメインラインと呼ばれる神学校としてプリンストンとデュークを載せています。
ざっと見てかなり神学校によって特色が見て取れます。後半の主流派の神学校2校は圧倒的に聖書神学の必修科目が少ないことが分かります。原語も必修ではありません。主流派の神学部はその代わり選択科目の数が非常に多く、大学院生が自ら興味のある授業を選べるようになっているところが多いです。逆に福音派の神学校は一般的に聖書神学の必修科目が多めです。タルボットはギリシャ語・ヘブル語含めた聖書神学の授業が9科目。トリニティは一見ギリシャ語を履修しなくても良いように見えますが、これは必修として入学前に学んでいる前提でプログラムが組まれているという恐ろしいトラップです。。(最初騙されました笑)ギリシャ語ができないと新約の授業が取れません。ですので実際は8割の学生がギリシャ語IとIIを履修しています。それを含めるとトリニティは実質15科目。これはアメリカの福音派の神学校の中ではかなり多い方です。そして興味深いのが3つ目のフラー。ギリシャ語・ヘブル語の授業ではなくTools for…という科目名から分かるように、実際言語を教えるよりも基礎文法を教えた上で、聖書ソフト等を使って読めるようにするというある意味ショートカット戦法をとっています。笑 フラーは宣教学や実践神学に重きを置いている神学校なので聖書原語を学ぶことに関してはある種思い切って省き、その点実践的な分野に注力していることがわかります。
このように、「 アメリカの神学校 」といっても神学校ごとにカリキュラムにかなり特徴があることが分かります。「聖書(聖書神学)を学ぶ」という観点から見ても神学校によって必修科目の数に相当の差があります。(授業時間等に違いもあるため科目数だけでは測れないのですがあくまで目安としてです)
今回参照した神学校のページ
タルボット神学校、トリニティ神学校、フラー神学校、プリンストン神学校、デューク大学神学部
日本の神学校:聖書神学カリキュラム比較
それでは「聖書を学ぶ」という目的で日本の神学校で学んだ場合はどうでしょうか。以下都内の超教派神学校の中からジャンルごとに選んで掲載しています。
1・聖契神学校:夜間の授業もあり、通いで学べる神学校として様々な働きの方々が学んでいます。
2・東京基督教大学大学院TCU:日本で唯一の福音派の大学・大学院です。世界的にも神学大学院として認可されています。
3・JTJ 神学校:2年間の牧師養成課程を通信制で受けられる神学校です。
4・東京神学大学大学院:福音派の神学校ではなく、日本基督教団の神学校です。
1・通える神学校、2・福音派の神学大学院、3・オンラインで(も)学べる2年生神学校4・日本基督教団の神学大学院とジャンルの異なる神学校の聖書神学科目を比較してみました。いかがでしょうか。TCUは選択科目が多く、さらに3年次編入で大学3−4年生として学んでから2年大学院で学ぶというシステムなので他の神学校とカリキュラムを単純に比較するのは中々難しいです。(TCUの方教えてくださいm(__)m)どの学校も単位数や時間も異なりますし日数も異なるので単純比較は出来ません。しかしアメリカの神学校と比較した時に分かるのは、「聖書(聖書神学)を学ぶ」という観点になった時、アメリカの神学校の方が多く学べるのかというと学校にもよりますが、決してそんなことはないということです。私自身はアメリカに留学する前に聖契神学校で2年ほど学ばせていただきました。そしてアメリカの神学校で同じ名前(新約緒論・New Testament survey)を取りましたが、レベルの差はほとんど無いと思いました。むしろ聖契神学校の方が課題の量で言えば遥かに多かったほどです。
全体的に見ると、日本の神学校では福音派の神学校ではほとんどの場合ギリシャ語・ヘブル語両方が必修科目としてあり、聖書神学の分野での必修科目はアメリカの神学校と比較しても多いくらいです。逆に海外の神学校では近年のトレンドとして聖書原語(ギリシャ語・ヘブル語)の授業がどんどん削られている傾向にあります。理由としてはウェブサイトやアプリ、またAccordanceやLogosなどのソフト等の技術の発展に伴い、原語を知らなくても簡単に調べられる時代になったからです。「単語や文法を覚えなくてもソフトで調べれば済む。」という考え方から来ています。多くの、とくに主流派の神学校ではギリシャ語かヘブル語かどちらかを履修すれば良し、というところも増えています。福音派の神学校は聖書の権威を重んじ、聖書原典を読むことを大事にしているためギリシャ語・ヘブル語は必修の学校がほとんどですが、それでも一昔前と比べると原語の比重は落ちてきています。
そして最後に、友人の多くが学んでいる聖書宣教会のカリキュラムを紹介したいと思います。
圧倒的です。笑
初めて見た時の衝撃は忘れられません。笑 ここまで聖書原語、聖書釈義を徹底している神学校は世界中でもあまり無いのではないかというくらいのレベルです。宣教会で学んでいる友人からは毎日のようにギリシャ語、ヘブル語のテストがあり、徹底的に聖書釈義を叩き込まれると聞いています。もし「聖書を学ぶ」という目的、また聖書原語をしっかり学びたいという方であれば、聖書宣教会は間違いなく世界トップレベルです。実際宣教会から海外に留学した方からは「海外の神学校の釈義のレベル思ったより低かった」とよく耳にします。笑 もしギリシャ語・ヘブル語で徹底的に聖書を学びたい!という方がいれば海外の神学校ではなく聖書宣教会をお勧めします。笑
そうすると誰もがこう思うことでしょう
アメリカの神学校 に行く必要ある?
その通り。日本で牧会するのであれば特にわざわざ留学する必要はありません。笑 聖書を学ぶという観点において日本の方が劣っているということも全くありません。じゃあどうしてわざわざ日本の神学校ではなくアメリカの神学校で学ぼうと思ったのか。逆にアメリカの神学校で学べて日本では学べないことはあるのか?次回は「アメリカの神学校でしか学べないこと」について記そうと思います。
また、留学に限らず、神学校を選ぶ時に個人的に考えたポイントについては以下のページにまとめてあります。
SBTSでも、ギリシャ語クラスの最初の日に「何曜日がギリシャ語を学ぶ日?」と質問されて、全員が「every day and night」と答えるところから全てが始まりましたよ。
Kさん、コメントありがとうございます。・Souther Baptist Theological Seminaryでしょうか?現在のMDiv(MDiv in Christian Ministry)のカリキュラムではSBTSはギリシャ語、ヘブル語の釈義の授業は随分減っていて、実践神学重視にシフトしているようです。ですが、授業数は少なくても原語はやらないと忘れてしまいますから”Everyday and night”には変わりはないと思います!
https://www.sbts.edu/theology/degree-programs/mdiv/christian-ministry/